抄録
本邦においては, 臨床症状と検査値を基準に総合的かつ定量的に評価する播種性血管内凝固症 (DIC) 診断基準が1980年厚生省特定疾患調査研究班により設定され, 1988年の改訂を経て, 既に20年になる. 本診断基準は海外での評価も高く, 臨床研究や新規開発薬剤の臨床治験などにも利用され, 広く定着した感がある. 一方, 基準を厳密に守ると早期治療を逸する危険があるとの批判も近年聞かれるようになってきている. そこで, 日本血栓止血学会・臨床血液学会評議員と一般臨床医を対象にアンケート方式で本診断基準の利用状況を調査した. 98%の医師が本診断基準を認識しており, 何らかの形で利用していると回答したが, 忠実には遵守していない傾向が認められた. 特に, 血清FDP値や血小板数などの臨床検査値は, 診断基準に示されるワンポイントの絶対値よりも経時的変化をより重視する傾向が強く, これらをスコアとして評価できるよう改訂すべきとの希望が多く聞かれた.