日本輸血細胞治療学会誌
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症例
輸血前血清を凍結保管していたことでB型肝炎ウイルス再活性化の経過を調査しえた1例
 
紀野 修一友田 豊伊藤 玲美渋佐 琴恵葛西 眞一生田 克哉細木 卓明佐藤 一也鳥本 悦宏高後 裕森下 勝哉佐藤 進一郎加藤 俊明池田 久實
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2007 年 53 巻 5 号 p. 553-557

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抄録
大量化学療法施行後に, B型肝炎ウイルス (HBV) が再活性化したと考えられる輸血患者を経験した. 多発性骨髄腫と診断された50歳代の女性に対し自己末梢血幹細胞移植を含む大量化学療法を施行した際, 赤血球濃厚液を20単位, 血小板濃厚液を305単位使用した. 治療1年後 (2005年9月) に輸血後感染症検査を行ったところ, HBV-DNAが陽性であった. 治療前 (2002年8月) と輸血継続中 (2004年2月) のHBs抗原が陰性であったため, 輸血によるHBV感染を疑い, 2003年9月から2005年4月までの患者保管検体 (合計12本) で検査を行った. 輸血前 (2003年9月) の検体では, HBsAg (-), HBsAb (+), HBV-DNA (-) であったがHBcAb (+) で, 潜在性HBV感染と推定された. 以降, 2004年9月までは同様の検査結果であったが, 2005年4月にはHBs抗原の陽性化とともに血清中にHBV-DNAが確認され, HBVの再活性化と診断. HBs抗体の力価は, 2003年9月から行われた大量化学療法に一致し徐々に低下, 2005年4月には陰性化した. HBV陽性の期間, ウイルス再活性化による肝炎は発症していない. 輸血血液保管検体の個別核酸増幅検査はすべて陰性で, 輸血によるHBV感染は否定された. 本症例では輸血後感染症検査によってHBV感染が初めて認識され, 輸血前を含む保管検体の遡及調査で, HBV再活性化にいたる変化を追跡し得た. 輸血後にはじめてウイルス感染が確認された場合には, その原因をつきとめるために輸血前検体の保存が必須である.
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© 2007 日本輸血・細胞治療学会
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