急性疼痛性輸血反応 (acute pain transfusion reaction; APTR) は, 輸血開始後30分以内に躯幹や四肢近位部に疼痛を認め, 中止後30分以内に消退し, 呼吸困難, 血圧上昇, 悪寒, 頭痛, 潮紅などを伴う稀な副反応であるが, 穿刺局所の疼痛や発赤の記載はない. 我々は, 激痛と発赤が穿刺部位に限局し, 軽度の血圧上昇以外の症状を認めない症例を経験した.
症例は, 68歳男性で, 輸血歴はない. 2017年1月急性解離性弓部大動脈瘤でステンドグラフト術を受けた. 7月再度ステントグラフト術と両腋窩動脈間バイパス術を受け, 術中回収式自己血は副反応なく輸血し得た. 翌日, 同型適合貯留前白血球除去赤血球液 (prestorage leukoreduced RBCs; PLR-RBCs) の輸血開始直後より穿刺部位の激痛と発赤を認め, 中断10分後に症状は消退した. 別腕で同製剤を再輸血したが, 同様な症状と一過性の軽度血圧上昇を認め, 中断した. 溶血所見は認められなかった. その後, 他の2バッグのPLR-RBCs輸血は副反応なく行いえた. 翌々日, 同型適合PLR-RBCsの輸血開始後に同様な症状と一過性の軽度血圧上昇を認め, 中断5分後には症状は消退した.
この急性輸血副反応は, 激痛と発赤が穿刺部位局所に限られ, 一過性の軽度血圧上昇以外の症状を認めないことから, APTRとは異なる急性局所疼痛性輸血反応 (acute localized pain transfusion reaction; ALPTR) と称するのが妥当ではないかと考えられる.
抄録全体を表示