日本輸血細胞治療学会誌
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最新号
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原著
  • ―学会認定・臨床輸血看護師在籍施設と非在籍施設の比較から―
    松本 真弓, 岡 耕平, 西岡 純子, 山本 由加里, 村上 純, 松岡 佐保子, 田中 朝志
    2025 年71 巻5 号 p. 691-700
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    【目的】輸血看護師の在籍状況による施設間比較を通じて,輸血副反応の観察・報告体制に与える影響を分析した.その結果を基に,全国的なヘモビジランス体制強化に向けた課題を明確化する.【方法】200床以上の医療施設1,791施設を対象に,無記名自記式質問票調査を実施した.【結果】685施設から回答を得た(有効回答率38%).輸血看護師在籍施設(229施設)は,非在籍施設(456施設)と比べ,バイタルサイン測定の実施率が高い傾向を示した.特に,輸血前(p<0.01)と輸血終了時(p<0.05)で有意に実施率が高かった.また,日本輸血・細胞治療学会が提唱する「輸血副反応の症状項目」(p<0.01)および「輸血副反応の診断項目表」(p<0.01)の使用状況も,輸血看護師在籍施設の方が有意に高かった.しかし,回答施設全体での使用は「症状項目」が82%,「診断項目表」が55%にとどまった.【考察】輸血看護師在籍施設では,バイタルサイン測定の実施率が向上しており,患者の状態変化を早期に捉える体制の強化に寄与していることが示唆された.一方で,副反応報告システムの全国的な統一が課題として挙げられた.

短報
  • 西村 理惠, 南口 仁志, 井筒 雅大, 三浦 由布子, 茂籠 弘子, 小室 伸子, 内林 佐知子, 湯本 浩史, 村田 誠
    2025 年71 巻5 号 p. 701-704
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    日本赤十字社から供給される赤血球製剤の有効期間が,2023年3月15日より採血後21日間から28日間へ延長された.それに伴い当院では,赤血球製剤の院内在庫単位数を2023年4月1日より以下のように増やした:A型18単位から24単位へ,O型18単位から24単位へ,B型10単位から12単位へ,AB型6単位から8単位へ.その結果,院内廃棄率は2020年度0.36%,2021年度0.50%,2022年度0.25%,2023年度0.06%と,2023年度が最も低かった.2023年度の採取後22日以上経過した赤血球製剤の廃棄回避率は91.7%だった.2023年度には採取後22日以上経過した赤血球製剤が33本(66単位)使用されたが,いずれの製剤も副反応は発生しなかった.赤血球製剤の有効期限延長は院内廃棄率を低下させ,貴重な社会資源である血液製剤の有効活用につながると考えられた.

  • 村井 良精, 田中 信悟, 片山 雄貴, 盛合 美加子, 井山 諭, 髙橋 聡
    2025 年71 巻5 号 p. 705-707
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    2023年3月から赤血球液の有効期間が採血後21日から28日へ延長された.本検討は有効期間の延長が当院の輸血医療にどのような影響を与えているか解析することを目的とした.有効期間延長に伴い廃棄率は0.39%から0.16%へ減少した.その原因として,有効期間延長前には廃棄原因の80%を占めていた有効期限切れによる廃棄が,有効期間延長に伴い認められなくなったことに起因すると考えられた.なお,本検討期間において,当院への赤血球液納品時における残り有効期間の中央値は,延長前は全血液型で12日(0~19日)であったのに対し,延長後は17日(0~17日)と5日長くなっていた.

    一方,有害事象の発生率については,有効期間延長の前後で0.49%から0.73%へとわずかに増加を認めたが,採血後の経過日数によって発生率が上昇する傾向や有効期間延長に起因して生じたと考えられる副反応は認めなかった.

    以上より,赤血球液の有効期間延長は血液製剤の廃棄率減少につながること,すなわち血液製剤の有効利用に貢献していると考えられた.

症例報告
  • 萩野 剛史, 佐藤 智彦, 林 武徳, 金子 直也, 能登 俊, 橋本 大吾, 竹迫 直樹, 豊嶋 崇徳
    2025 年71 巻5 号 p. 708-713
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    症例は軽度の認知機能低下がある94歳女性,複数の基礎疾患を有する高度貧血に対する在宅輸血を目的に紹介された.前医2施設で貧血の原因精査が不十分であったが血液疾患が疑われ,症状悪化と家族の希望からやむを得ず在宅輸血を導入した.輸血開始に合わせて貧血の原因精査を行い,原発性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン補充療法を開始することで1カ月以上にわたり赤血球輸血を回避できた.その効果が一過性で赤血球輸血の再開を要したことから,さらに原因精査を進め,骨髄穿刺により骨髄異形成症候群を否定した上で,腎性貧血に対するダルベポエチン投与を開始し,それ以降の赤血球輸血の継続を回避できた.経過中には,訪問看護と連携しながら計5回の赤血球輸血を実施した.在宅輸血の実施には,患者・家族の支援体制,多職種連携,血液製剤管理などの課題があり,限られた血液資源の適正利用の観点からも輸血量や回数の最小化が求められる.本症例は,高齢者の貧血は複数の原因によることが多く,漫然と在宅輸血を継続するのではなく,医療者が可能な限り輸血回避を模索しながら包括的に評価・対応する重要性を示唆している.

活動報告
  • 関 義信, 古俣 妙, 瀬水 悠花, 昆 伸二, 布施 一郎
    2025 年71 巻5 号 p. 714-719
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    [目的]広大な新潟県で廃棄血削減のための問題点や対策を明らかにする.

    [方法]新潟県内の75医療機関を対象とし,2021年度の赤血球製剤の血液型別使用量,廃棄量,院内在庫に関しFormsを用いたアンケート調査を施行した.

    [結果]県全体の廃棄量はO型が461単位(35.1%)と最多で,AB型397単位(30.3%)と続いた.廃棄量(廃棄率)は,AB型215単位(3.48%),O型343単位(1.87%)であった.廃棄量は100~300床の中小規模施設かつ,年間赤血球使用量1,000~5,000単位の施設かつ,院内在庫ありの施設に多かった.原因は,院内在庫血の有効期限切れが最多であった.エリア別廃棄では供給拠点から最遠方の上越エリアがO型,他はAB型が最多であった.

    [考案]廃棄減少のためには,供給地点から遠方の中小規模施設で使用実績に見合ったO型備蓄用製剤の配置,可能な限りO型に限定した備蓄に改善する必要がある.

  • 細川 真梨, 関 修, 藤原 実名美, 成田 香魚子, 吉田 由衣, 黒﨑 友里衣, 伊藤 智啓, 石岡 夏子, 阿部 真知子, 佐藤 裕子 ...
    2025 年71 巻5 号 p. 720-725
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    当院では,2014年8月より,新鮮凍結血漿-LR480より院内調製した同種クリオプレシピテート(以下クリオ)の運用を開始し,運用開始時より投与前フィブリノゲン値(以下FBG値)測定の義務化,輸血療法委員会での全症例提示といった適正使用に重点を置いた活動を行ってきた.クリオの投与は,基本的にABO同型とし,フィブリノゲン投与量が1~2gとなるように,1回3本投与としている.クリオ使用本数は年々増加し,2023年は165症例で717本が使用され,心臓血管外科が402本(56.1%),次に救急科が168本(23.4%)であった.投与前FBG値の測定は,ほぼ全例で実施されている.運用開始からの10年間に投与された1,128症例のうち,明らかに投与理由が適応外と考えられたのは,9症例(0.8%)のみであった.これは,運用開始時より行ってきた輸血療法委員会における継続的な適正使用への取り組みが,クリオが根拠なく漫然と使用されることを防ぎ,より適正な使用へと繋がったためと考える.

  • ―中小規模医療施設における委員会設置および委員会活動の実態調査―
    樋口 敬和, 塚原 晃, 坂口 武司, 岡本 直子, 山本 晃士, 新妻 太一朗, 松田 充俊, 石田 明
    2025 年71 巻5 号 p. 726-732
    発行日: 2025/10/01
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー

    2023年に行った施設内輸血療法委員会(委員会)の実態についての調査に回答した300床未満の施設の58委員会と委員会未設置55施設に再調査を行った.36委員会と未設置21施設が回答し,8委員会,未設置3施設にさらに追加調査を行った.大部分の委員会が血液製剤使用状況,インシデント,副反応を把握,報告していたが,輸血適応の検討,適正使用の推進,フィードバックを行っている委員会は約半数で,院内巡視を行っていたのは1委員会のみであった.委員会が未設置だった施設の全てが1年後も未設置で,未設置の理由は輸血の機会が少ないことが多かったが,委員会についての情報,周知が不十分であることも示唆された.中小規模医療施設における委員会設置,活動活性化のために,合同輸血療法委員会としての働きかけが可能と考えられる.輸血の機会が少ない中小規模施設では,委員会に拘らない各施設の実態に即した輸血管理,適正使用推進のための体制の構築が必要である.

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