日本輸血細胞治療学会誌
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最新号
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総説
  • 山本 由加里, 伊井 みず穂, 和田 暁法
    2024 年 70 巻 3 号 p. 393-399
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

    危機的出血への対応ガイドライン及び産科的危機出血の対応指針2022では看護師の役割として,出血量の測定・記録や輸血の介助,血液製剤の運搬・確認,輸血部門との連絡などが挙げられている.緊急輸血が多い救急現場では血液型情報や輸血歴の有無・血液伝播性感染症・宗教上の問題などの情報収集,輸血同意書など治療と同時進行で行う必要がある.緊急性が高いほど輸血関連インシデントや有害事象のリスクは高まるが,安全かつ的確に業務を遂行するためにはひとつひとつの行為がなぜ必要なのかを熟知し,そのための手間を惜しまないことが重要である.

    近年タスクシフトやタスクシェアにより看護師は多くの役割を求められる.緊迫した状況で多くの役割を短時間かつ的確に行うためには日頃の準備が必要であり,マニュアル作成や多職種とシミュレーションを行うことが望ましい.実際の現場では看護師の中にもコマンダーを置き看護師の役割遂行や多職種との連携を担うことが理想である.

    本稿では緊急輸血・大量輸血時における看護のポイントや看護師のチーム医療における役割について述べる.

ガイドライン
原著
  • 原口 京子, 髙橋 敦子, 奧山 美樹, 髙橋 典子, 宮本 京子, 李 悦子, 高杉 淑子, 金子 誠, 池田 和彦, 石丸 文彦, 高梨 ...
    2024 年 70 巻 3 号 p. 431-439
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

    CD34陽性細胞(CD34)数は測定方法で差が生じうる.海外に遅れて非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)が開始された2011年以降に標準化が推進され,2016と2017年の国内初の外部精度評価研究で施設間差の改善を認めた.今回2020年2月までの約10年間のUPBSCTにおいて,採取施設と移植施設のCD34測定値を比較し施設間差の実態と経時的変化を調査した.日本骨髄バンクより全1,047件のCD34数(採取施設測定)を得たが,調査参加の117施設から得られた移植施設CD34数の情報は257件であった.うち244件は採取施設の測定法情報も得た.両施設の値は高い相関を示した(r2=0.854)が,最大5倍の差の外れ値も認めた.両施設がsingle platform法の159件と,片方または両方がdual platform法(DP group)85件とで違い率(差/平均)に有意差は無かった.2016~18年は2011~15年より違い率が有意に低下し,DP groupで顕著に改善した.しかし2019~20年には差が再び増加する傾向がみられ,継続的な標準化維持対策の必要性が示された.

  • 降田 喜昭, 中村 裕樹, 石井 修平, 鞠子 文香, 山田 圭佑, 川上 美由紀, 真田 未来, 安藤 美樹, 安藤 純
    2024 年 70 巻 3 号 p. 440-446
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

    キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor:CAR)T細胞の製造には,患者の単核球とCD3+T細胞を採取するが,基準値以上の細胞数を採取した場合でも一定の割合で製造失敗となる.本研究は,製造失敗に関与するT細胞の評価を目的に2020年7月~2022年9月にTisagenlecleucel製造を目的に白血球アフェレーシスを実施した32件を対象とし,リンパ球の表面マーカーおよび疲弊マーカーについて解析した.測定サンプルは,細胞調製後に凍結保存した検体を用いて,解凍後生細胞率,表面マーカー(CD45,3,4,8),疲弊マーカー(PD-1,CTLA4,TIM3,LAG3)についてフローサイトメーターで測定した.製造状況は,成功29件(90.6%),失敗3件(9.4%)であり,製造成功群と失敗群での比較は,表面マーカーのCD4+T細胞数のみに有意差(p=0.02)を認め,疲弊マーカーには有意差を認めなかった.本研究の解析結果から,製造失敗にはCD4+T細胞数が関係している可能性が示唆された.しかし,症例数が少ないため更なる検討が必要である.

症例報告
  • 渡辺 和亮, 大石 沙織, 髙野 勝弘, 中嶋 ゆう子, 原 順一, 多田 正人, 熊谷 拓磨, 桐戸 敬太, 井上 克枝
    2024 年 70 巻 3 号 p. 447-451
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/17
    ジャーナル フリー

    患者は43歳女性,急性リンパ性白血病に対して臍帯血移植が施行され,連日赤血球・血小板輸血が行われていた.移植後Day29の血小板輸血では製剤の外観に問題はなくスワーリングも保たれていたが,輸血開始15分後に血圧低下,動脈血酸素飽和度低下,発熱,悪寒・戦慄が出現し,輸血を中止した.アナフィラキシーショックを疑いヒドロコルチゾン,エピネフリン,グルカゴンを投与したが,発熱も認められたため,敗血症性ショックの可能性を考え血液培養を実施した.患者血液と輸血バッグの残余血小板製剤の培養同定検査で,血清型・菌種・泳動パターンが一致した大腸菌が同定された.また,輸血バッグの残余検体のエンドトキシン濃度は2,000pg/ml以上であった.以上より,血小板製剤を汚染した大腸菌から産生されたエンドトキシンによりショックを引き起こしたと結論付けた.血液製剤の細菌汚染は稀であるが,致死的な副反応の報告も存在する.現行のシステムでは完全に防ぐことは困難であるが,よりリスクを低減させるために,全自動微生物培養検出装置による細菌スクリーニングなど,微量な細菌同定を行えるシステムの導入を検討する必要がある.

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