日本輸血細胞治療学会誌
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原著
  • 谷川 義則, 中川内 章, 中村 公秀, 山下 友子, 中尾 真実, 山田 尚友, 山田 麻里江, 中村 秀明, 板村 英和, 末岡 榮三郎 ...
    2023 年 69 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    背景:大量出血時に伴う希釈・消費性凝固障害に対するクリオプレシピテート(クリオ)の使用が近年広がっている.クリオはフィブリノゲン補充効率が高く止血効果に優れるが,作製時に生じるクリオ上清血漿(乏クリオ)は推奨・提言がない.そこで,当院における乏クリオの使用状況を調査し検討を行った.

    方法:2015年1月~2018年1月にクリオが供給された症例を対象に後ろ向きで調査を行い,1)クリオおよび同一症例に共に供給される乏クリオの使用状況,2)乏クリオの併用に影響する因子について解析し検討を行った.

    結果:161例に対し,FFP480から作製した676袋のクリオが供給され,620袋が使用された.疾患別の乏クリオ併用/クリオ使用はCPB使用手術237/524袋,CPB非使用手術18/80袋,手術以外1/16袋であった.AB型の異型適合血(AB型クリオ)は多変量解析により乏クリオ併用率を減少させる有意な関連因子であった(OR:0.45,95%CI:0.22~0.90,p<0.02).

    考察:AB型クリオの使用が乏クリオ併用を控える要因だが,異型のAB型クリオを使用した症例に輸血関連合併症は認めなかった.今後乏クリオの使用方法や有効性の検討が必要である.

  • 山崎 理絵, 上村 知恵, 五十嵐 靖浩, 松橋 博子, 鳥海 綾子, 浅尾 裕美子, 黒田 留以, 藤村 亮介, 弥永 侑子, 加藤 淳, ...
    2023 年 69 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    キムリア製造には,原料細胞として必要十分なCD3+リンパ球を採取する必要がある.本研究では,Tisagenlecleucel治療を目的としたリンパ球採取を行った30例(小児5例・成人25例)を後方視的に解析し,血球自動分析装置で測定した採取途中産物中リンパ球数(CBC-Ly)と採取前末梢血CD3+比率から最終産物のCD3+リンパ球数が予測可能であるか検討した.

    採取CD3+リンパ球数は2.39×109個(範囲:1.05~6.07×109個)で,全例で1回の採取で規定の細胞数を採取できた.採取開始約1時間の産物中CBC-Lyと末梢血CD3+比率から最終産物中のCD3+リンパ球数を算出すると,実測値と高い相関関係にあった(r = 0.854,P<0.001).ただし,2例で産物中CBC-Lyが測定不能で,1例でCD3+推定値と実測値で大きな乖離があった.

    採取前の末梢血CD3+比率と途中産物中CBC-Lyから産物中のCD3+リンパ球数を推測することで,効率的にCAR-T細胞療法の原料リンパ球採取ができる可能性があるが,更なる検討が必要である.

症例報告
  • 祖父江 晃基, 奥田 誠, 栗林 智子, 日高 陽子, 遊佐 貴司, 藤原 ゆり, 石橋 瑞樹, 齋藤 光平, 鈴木 大夢, 岸 まい子, ...
    2023 年 69 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    Passenger lymphocyte syndrome(PLS)は造血幹細胞移植や臓器移植のあとに溶血性貧血の症状を呈する状態のことである.その発症機序は,移植によってドナー由来抗体産生細胞が移入され,増殖し抗体を産生することで溶血が起こる.

    レシピエントは60代女性でA型RhD陽性,ドナーは夫で60代男性,B型RhD陽性であった.血液型不適合腎移植となるため,移植前にリツキシマブ投与を含む脱感作療法を実施した.移植4日後に溶血性貧血の所見を認めたため赤血球液を輸血した.一時的に輸血効果を認めたが徐々に貧血が進行し,移植16日後に再度赤血球液の投与を計画したところ交差適合試験で不適合となった.精査の結果,ドナー由来と考えられる抗Aが検出されたためPLSによる溶血性貧血が考えられO型洗浄赤血球を輸血した.一過性に輸血効果を得たが,貧血の進行と輸血を繰り返した.

    移植後の溶血性貧血の原因としてPLSを考慮することが必要であり,レシピエントの血液型ウラ検査を間接抗グロブリン試験で実施することや,直接抗グロブリン試験,抗体解離試験でドナー由来血液型抗体を証明することが重要である.

活動報告
  • 藤野 恵子, 山口 恭子, 榎本 麻里, 堀田 多恵子, 平安山 知子, 國﨑 祐哉, 赤司 浩一
    2023 年 69 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    2020年4月,新型コロナウイルスの感染拡大を受け,当院では一部の外来や手術を縮小する「診療制限」が行われた.この診療制限が輸血製剤使用量へ与えた影響を明らかにするため,調査および解析を行った.

    当院全体の手術実施件数は診療制限期間に著減したが,その多くは同種血使用量の少ない診療科であった.延期または中止となった手術には貯血式自己血採取後の症例も多く,期限切れによる廃棄量が増加した.一方で当院における同種血使用量の多くを占めている心臓外科手術の件数に変動はなく,同種血使用量の減少は限定的であった.制限解除後には特に造血幹細胞移植に関連した赤血球・血小板製剤の使用量が著増し,制限前の水準を上回った.

    以上より,当院の診療制限は,貯血式自己血の大量廃棄,制限解除後の同種血使用量増大という2つの影響を与えたことが明らかとなり,今後有事の際に対策を講じるべきポイントであると認識した.

  • ―当院での事例検討―
    小見山 貴代美, 辻 太一, 大田 恭太郎, 木村 有里, 松井 貴弘, 天野 竜彰, 中前 健二, 鏡味 良豊, 佐藤 友香
    2023 年 69 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回,脊椎固定術を計画した,透析患者に対し,多職種で協力し貯血式自己血輸血を行い安全に周術期管理ができた.

    【対象及び方法】透析導入の50代男性.脊柱管除圧に加え脊柱再建術が必要で自己血貯血が選択された.

    初回貯血時に主治医,自己血輸血責任医師,輸血責任医師,輸血検査室専任臨床検査技師,臨床工学技士,自己血看護師で手技を確認し実施した.

    【結果】手術は矯正除圧固定術で出血量は515gであった.

    術後ドレーンからの出血は490g.自己血返血は術後48時間以内に行った.

    【考察】自己血貯血についてマニュアルがなく,本症例でマニュアル管理体制案を作成して輸血療法委員会に諮し貯血が承認された.

    多職種の協働を促しチーム医療の推進により患者にとって最良の医療が選択されるよう協働することが望まれる.

    【まとめ】血液透析患者であっても多職種で協力し実施管理体制を確立することで自己血貯血は可能であった.

  • 鈴木 沙樹, 力丸 峻也, 皆川 睦美, 渡邉 万央, 山田 舞衣子, 皆川 敬治, 髙野 希美, 渡部 文彦, 小野 智, 川畑 絹代, ...
    2023 年 69 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    輸血療法は緊急患者の救命に重要な役割を果たす.福島県立医科大学附属病院の超緊急輸血の依頼件数は増加傾向にあり,休日及び夜勤帯の人員不足時における製剤搬送遅延緩和のため,2019年7月末より救命救急センター初療室内の輸血専用保冷庫にO型RhD陽性赤血球製剤6単位を常備する運用を開始した.

    常備製剤は,時間帯を問わず製剤搬送時間を待てない症例では積極的に使用されており,検査や人員確保までの時間を効果的に補填していると考えられる.例えば,超緊急時に製剤準備を省略できるため,検査を優先し集中して行うことで患者血液型の報告を早めることができた.また,製剤使用開始時間は,運用に慣れた期間後半では短縮傾向となり,来院3分以内に輸血が開始された例もみられた.必要時,迅速に使用できるO型RBCの常備配置は救命への大きな利点となりえる.

論文記事
  • 渕崎 晶弘, 保井 一太, 田中 光信, 三橋 久子, 下垣 一成, 木村 貴文, 瀧原 義宏, 平山 文也
    2023 年 69 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2023/02/25
    公開日: 2023/03/14
    ジャーナル フリー

    解凍赤血球液(Frozen-Thawed Red Cells:FTRCs)は,中間製品である凍結赤血球液(Frozen Red Cells:FRCs)として10年間保存可能であるため,まれな血液表現型を持つ患者にとって有用な血液製剤である.しかしながら,FTRCsは,凍結・融解工程に起因する溶血により,製品規格である総ヘモグロビン(Haemoglobin:Hb)含有量を満たさない場合がある.本研究では凍結工程に着目し,溶血を抑制することでFTRCsのHb含有量の向上を目指した.採血5日目(5-day-old:5D)または9週目(9-week-old:9W)の赤血球液(Red Blood Cells:RBCs)をグリセロール化し,プーリング後に2分割した.グリセロール化RBCsはプログラムフリーザー(Programmed Freezer:PF)法またはディープフリーザー(Deep Freezer:DF)法で凍結した.凍結4~8週間後,FRCsを融解して脱グリセロール化した.9Wの原料血液は,Hb回収率が低値で製品規格を満たさないFTRCsの模倣品とみなした.結果,PF法はDF法より高いHb回収率を示した(5D:85.9±2.1 vs 81.1±3.5%,p<0.001)(9W:56.8±4.0 vs 52.4±3.5%,p<0.001).赤血球内ATPおよび2,3-DPG量はPF法とDF法で変わらなかった.以上のことからPF法はDF法よりもグリセロール化RBCsの凍結に適していると考えられ,まれ血を対象としたFTRCsの安定供給に貢献すると考えられる.

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