2010 年 56 巻 5 号 p. 612-617
日本赤十字社が2007年まで製造·供給していた赤血球濃厚液(RC-MAP)には保存に伴う大小の凝集塊の形成が報告されていた.大凝集塊は輸血セットへの目詰まりを引き起こし,微小凝集塊は肺塞栓を誘発する可能性が示唆されている.保存前白血球除去が導入され,血液保存液としてはACD-A液ではなく,CPD液を用いた赤血球濃厚液-LR「日赤」(RCC-LR)の供給が開始されたが大凝集塊や微小凝集塊の形成に関する報告はみられない.そこで我々はCPD液を含むRCC-LRの保存中に形成される大凝集塊および微小凝集塊量を測定した.さらに微小凝集塊除去フィルターの使用に際しての判断基準は明確になっていないので微小凝集塊除去フィルター処理前後における微小凝集塊量を計測した.大凝集塊は現在供給されているRCC-LRでは全く形成されず,微小凝集塊の形成量も従来に比べ有意に減少した事を確認した.また,RCC-LRを微小凝集塊除去フィルターでろ過しても,処理前後の微小凝集塊量に変化はみられなかった.RCC-LRは大量輸血や小児輸血においては,わずかに混入する微小凝集塊が臨床的な有害事象を引き起こす可能性は否定できないが,成人の慢性貧血などで輸血する際は微小凝集塊除去フィルターを使用せずとも,微小凝集塊に起因する副作用は生じないと考える.