日本輸血細胞治療学会誌
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原著
ABO血液型不適合造血幹細胞移植後のドナー型赤血球検出の至適条件
尾崎 牧子二宮 早苗土手内 靖西山 記子谷松 智子西山 政孝和泉 賢一牟田 毅
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2010 年 56 巻 6 号 p. 687-691

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抄録

我々は,ABO血液型不適合造血幹細胞移植後の患者のドナー型赤血球の検出が,全自動輸血検査システム(AutoVue)では試験管法に比べ一定の期間遅れることを経験してきた.この遅れの原因を検討するため,A型のHLA完全一致,非血縁ドナーから骨髄移植を受けたO型の1症例を対象とし,比重差で分離した赤血球の最上層,上層,中層,および下層についてA型赤血球産生回復の推移を検討した.A型赤血球はday32に,AutoVueでは最上層のみに検出された.試験管法では被凝集価は,全体で32倍であった.また,分離検体では,最上層は64倍と上層,下層の8倍に比べ有意に高かった.day35にはAutoVueでA型赤血球は下層にも検出され,上下層の差は移植2カ月後に消失した.ドナー型赤血球は移植後早期には,網赤血球を含め比重の小さい若い赤血球の割合が多いため,赤血球の上層部に多く検出されると考えられた.AutoVueにおけるドナー型赤血球の検出の遅れは,AutoVueが遠心分離後の赤血球の最下層を吸引するためと判明した.
ABO血液型不適合造血幹細胞移植後の患者のドナー型赤血球の早期確認のためには,遠心分離後の赤血球の最上層を用い,そのモニタリングは赤血球層全体をよく混和したものを用いることが,効果的かつ正確である.

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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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