日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
症例報告
抗M(IgM+IgG)において抗体価測定時に反応増強剤無添加間接抗グロブリン試験で一部陰性を示した妊婦の1例
山田 麻里江山田 尚友久保田 寧木村 晋也東谷 孝徳末岡 榮三朗
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 60 巻 1 号 p. 32-37

詳細
抄録

反応増強剤を使用した不規則抗体検査では,冷式抗体の持ちこしが原因で間接抗グロブリン試験が陽性となることをしばしば経験する.冷式抗体の持ちこしを回避し,臨床的意義のある不規則抗体であるかの判別に,反応増強剤無添加間接抗グロブリン試験(以下60min-IAT)が利用されている.今回,IgM型抗Mの結合がIgG型抗Mの結合を抑制したため,60min-IATの反応が陰性化した可能性が示唆された症例を経験したので報告する.症例は,初回妊娠時にIgM型抗M,第一子出産後にIgM+IgG型抗Mを検出した.3回目の妊娠時,妊娠中期から出産前日まで2週間毎に抗M抗体価を測定した.妊娠37週で,抗M抗体価が64倍まで上昇したが,希釈系列の1倍,2倍希釈血清での60min-IATは陰性であった.フローサイトメトリー(FCM)の解析では,IgM型抗Mは低温度域より37℃でよく反応する抗体であった.IgM型抗体の結合がIgG型抗体の結合を抑制し,IAT時の抗IgGグロブリン血清との架橋ができなかった可能性が示唆された.本症例のような不規則抗体の場合は,ジチオスレイトール(Dithiothreitol:DTT)処理や2-メルカプトエタノール(2-Mercaptoethanol:2-ME)等によりIgM型抗体を破壊して,臨床的意義のある抗体を検出することが有用と思われる.

著者関連情報
© 2014 日本輸血・細胞治療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top