日本輸血細胞治療学会誌
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原著
食道癌切除例における輸血療法の臨床効果
九里 孝雄鈴木 久仁子大木 由紀子藤田 沙耶花樫村 誠
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2014 年 60 巻 3 号 p. 451-464

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抄録

食道癌切除症例における輸血療法の臨床効果をretrospectiveに検討した.対象:食道癌切除(同種血投与,1994~2012)99症例.平均年齢64歳.病期0,18例;I,17例;II,30例:III,21例;IV,13例.輸血療法は非使用(A群)41例,FFPのみ(B群)10例,RCCのみ(C群)26例,FFP+RCC(D群)22例の4群に分類した.各群の病期分布は早期例が多いB群を除き有意差なし.結果:Hb値は術後33%減少4群で差なく術後2週のHb値は各群差なし.術後合併症のオッズ比(OR)はB群0.182で最小,C群は1.621,FFP投与群では肺炎が少なく,RCC投与群(C群,D群)では縫合不全が多かった.5年生存率はA群72%,B群88%,C群41%,D群73%でありC群のみ有意に低下.病期0~IIでもC群46%で他群よりも有意に低かった.使用製剤ではRCC 4 U以上輸血群,FFP非使用群,アルブミン100 g以上使用群でそれぞれ有意に生存率が低下.C群では術後1週におけるリンパ球数800 /μl未満の症例が55%と多く,同症例では5年生存率47%であり,リンパ球数が多い群(64~77%)に比し最低率となった.C, D二群の比較ではD群の方がリンパ球数800 /μl以下減少例が少なかった.相関分析では術中のRCC投与,アルブミン総量はリンパ球数の減少率(術後/術前)に,また術後でのFFP投与は術後1週のリンパ球数に関連した.結論:食道癌の手術成績はRCC単独群で不良だった.その原因としては術後の免疫,輸血の効果など,種々の可能性が考えられ,今後の研究に期待したい.

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© 2014 日本輸血・細胞治療学会
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