抄録
難治性かつ慢性型の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対して,内服トロンボポエチン受容体作働薬(エルトロンボパグ)が臨床応用されているが,エルトロンボパグは副作用としての肝機能障害に注意が必要であり,既に肝機能障害のみられる症例においてはその原因の評価はもちろん,同剤の投与に一層の慎重さが要求される.今回我々は,1960年代にITPを初発し,頻回の輸血を受けた慢性C型肝炎合併の難治性ITP例に対してエルトロンボパグを投与した結果,本剤投与後の血小板数回復に続いて肝機能の改善も認められ,その後インターフェロン(IFN)療法を開始,救援的な血小板輸血を要することなく治療を継続できた一例を経験した.高度の血小板減少状態は,インターフェロン(IFN)療法における出血リスクを高め,継続的治療の中止や延期を余儀なくされかねないが,慎重な評価と観察を前提に本剤を使用することで,同様の症例においてもIFN療法を安全に完遂できる可能性がある.