日本輸血細胞治療学会誌
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短報
M-solで調製した高濃縮洗浄血小板のシリンジ中静置保存
平山 順一藤原 満博柴 雅之石川 善英佐竹 正博田所 憲治高本 滋
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2015 年 61 巻 5 号 p. 506-508

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抄録
容量を減らした(濃縮した)洗浄血小板(Volume-reduced washed platelets;VR-wPLTs)は容量負荷の抑制や輸血副作用の低減だけでなく,外来患者や急速輸注を要する患者などにとって輸血時間短縮というメリットがある.少容量の血液製剤を輸血する場合,シリンジで行われる可能性がある.シリンジ中ではガス交換ができず,また輸血中は振とうされない.よってVR-wPLTsをシリンジで輸血する場合,血小板機能の著しい低下が危惧される.本研究では,シリンジ内でVR-wPLTsを静置保存した際の品質変化について検討した.血小板製剤(PC)の遠心上清を出来るだけ除去した後,40 mlのM-solを添加して調製したVR-wPLTs(484 /μl, 44.1 ml, 2.13×1011)を振とう保存し,翌日50 ml用シリンジに移しかえ,2時間静置保存した.この保存でpO2値は20.4 mmHgから1.88 mmHgまで大きく低下し,pCO2値は上昇した.嫌気的代謝の生成物である乳酸の値も上昇したがpHは7.32から6.83までしか低下しなかった.MPV,%Disc, CD62P, annexin V,%HSR,凝集能は有意な差がみられなかった.グルコース値は有意に低下したが枯渇しなかった.スワーリングも確認された.以上の結果から血小板濃度をPCの約4倍まで濃縮したVR-wPLTsをシリンジで輸血しても2時間以内なら血小板機能の低下はほとんど無いと考えられる.
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© 2015 日本輸血・細胞治療学会
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