日本輸血細胞治療学会誌
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原著
自己アルブミン製剤としての濾過濃縮腹水の有効性
槍澤 大樹小林 良輔磯合 綾子小野寺 博和松野 義弘加藤 道夫菅野 仁
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2018 年 64 巻 5 号 p. 631-640

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抄録

難治性腹水に対して,自己腹水中のアルブミンを回収し,経静脈性に投与する方法は,腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CART)として既に30年近くの臨床実績があるが,今回我々はCARTを施行した147例について前方視的に調査を行った.特に腹水中のアルブミンに着目して,アルブミン製剤としての濾過濃縮腹水の有用性と問題点について考察した.回収されたアルブミン量は滲出性腹水で66.5g,漏出性腹水で31.1gであり,濾過濃縮された腹水製剤の投与により,漏出性では血清総蛋白0.5g/dl,アルブミン0.3g/dl,滲出性では血清総蛋白1.1g/dl,アルブミン0.7g/dlと有意な上昇を示した.肝硬変による難治性腹水(胸水)症に伴う低アルブミン血症に対して,高張アルブミン製剤の投与が推奨されているが,我が国のアルブミンの国内自給率は50%前後と低く,自己腹水中アルブミンの有効な利用法として,CARTはアルブミン製剤の使用量削減に貢献すると考えられた.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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