日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
難治性悪性リンパ腫患者における輸血関連E型肝炎
須佐 梢丸橋 隆行西本 奈津美岩原 かなえ石川 怜依奈石崎 卓馬三井 健揮塚本 憲史小林 剛佐藤 賢入内島 裕乃関上 智美横濱 章彦
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2018 年 64 巻 5 号 p. 655-659

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抄録

血液疾患治療中に輸血を複数回受けた患者がE型肝炎ウイルス (hepatitis E virus, HEV) に感染した症例を経験した. 患者はホジキンリンパ腫化学療法後の外来経過観察中に, 肝胆道系酵素の上昇が認められたことが発見の発端となった. ウイルス性肝炎関連検査の結果, HEV IgA抗体が輸血前保存検体で陰性, 肝炎発症時に陽性であったため, 日本赤十字社に輸血後感染症疑いの報告をした. 調査の結果, 患者と献血者の保管検体から検出したHEVの塩基配列が一致したため, 輸血後E型肝炎であると確認された. 肝炎は早期に軽快し, 慢性化は見られなかった. HEVは献血者の感染症検査項目に含まれていないが, 近年感染の報告が増加している. 多くの輸血用血液製剤を使用する施設では少なからぬHEV RNA陽性の製剤が使用されている可能性がある. 当院では同時期にもう一例の輸血後E型肝炎を報告しており, HEVは輸血後肝炎の原因としてHEV感染が高頻度に見られる北海道のみならず, 関東甲信越地域であっても現在もっとも考慮するべきである. また, 輸血と感染の関連を特定するために患者の輸血前検体の保管が重要である.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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