日本輸血細胞治療学会誌
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原著
大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術における希釈式自己血輸血の有用性
岩朝 静子佐藤 順一山崎 健二野島 正寛
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2020 年 66 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

目的:手術に際して,貯血式自己血輸血は医学的に有用であるが,中等度以上の大動脈弁狭窄症では禁忌である.同種血供給源である献血人口の減少傾向から,同種血の使用削減に向けた努力が必要であり,大動脈弁狭窄症に対する希釈式自己血輸血の医学的効果について検討する.

方法:2016年4月から2019年2月までに重度大動脈弁狭窄症に対して待機的大動脈弁置換術を行った42例(希釈式自己血輸血を開始した2018年2月以降;A群18例,それ以前の症例;C群24例)を,2群間で後ろ向きに比較検討した.

結果:A群における平均自己血採取量は827.8±256.2mlであった.術後出血量(p<0.05)・同種血使用量(p<0.05)は,A群が有意に少なく,同種血回避率はA群50%,C群9.1%であった.

考察:大動脈弁狭窄症に対する希釈式自己血輸血は,同種血使用量の削減に有用であった.また,術直前の貧血暴露による,血行動態の急激な変化が懸念されたが,有害事象は認めなかった.

結論:大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術の希釈式自己血輸血は,ある一定の条件下では安全に実施しうる可能性が示唆された.

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© 2020 日本輸血・細胞治療学会
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