日本輸血細胞治療学会誌
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原著
我が国における免疫グロブリン製剤の使用量増加とその要因
菅河 真紀子佐川 公矯大山 功倫平安山 知子長井 一浩中島 一格河原 和夫
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2021 年 67 巻 1 号 p. 9-20

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抄録

近年, 世界においてグロブリン製剤の不足が深刻化している. 我が国においても使用量は2010年からの10年間で約1.5倍に増加しており, 特に2019年は需要予測を大幅に上回り, 緊急輸入を余儀なくされた.

2019年の使用量急増の直前に加えられた2つの要因「CIDP進行抑制への適応認可」と「濃厚製剤の上市」について分析したところ, CIDPに対するグロブリン製剤の使用量は継続的に増加傾向にはあったものの認可の前後で有意な増加は認められなかった. しかし, 濃厚製剤10%ヴェノグロブリンの上市によって, 治療時間が短縮され, 入院から外来, 在宅へと治療形態が変化しており, 特に継続的投与を必要とする低及び無ガンマグロブリン血症において使用量が急増していたことが確認された. 入院によって妨げられていた隠れた治療ニーズが外来治療が可能になることによって掘り起こされたものと考えられる. 今後, 企業による治療時間の短縮化が進むと継続的投与を必要とする疾患において更なるニーズが創生されるものと考えられる.

白熱した国際的血液事業ビジネスが繰り広げられる中, グロブリン製剤適正使用の推進と適応症の認可をどこまで広げ, 需要量をどのように調節するのかについての慎重な論議が必要である.

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© 2021 日本輸血・細胞治療学会
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