日本輸血細胞治療学会誌
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総説
ヘモグロビン異常症
槍澤 大樹菅野 仁
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2022 年 68 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

赤血球内に存在するヘモグロビンは, 肺胞で酸素を結合して組織に運搬する. ヘモグロビンの異常により酸素運搬能が低下すると, 組織は低酸素状態となり労作時呼吸困難や全身倦怠感などの症状が出現する. ヘモグロビン異常症はサラセミアと異常ヘモグロビン症に大別され, サラセミアはグロビン遺伝子の異常によりα-およびβ-ヘモグロビン鎖の量的アンバランスが生じた結果発症し, 鉄欠乏性貧血などとの鑑別にはMentzer indexが有用である. 不安定ヘモグロビン症はグロビン鎖のアミノ酸配列が変化してヘモグロビン鎖が不安定になり発症し, メトヘモグロビン血症はHbの還元に関与する酵素の異常により発症する. また, パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度測定における異常低値を示す場合, 空腹時血糖が異常高値であるにもかかわらずHbA1cが低値を示す場合, メトヘモグロビンが高値を呈する場合などはヘモグロビン異常症を疑う必要がある. 重症型のヘモグロビン異常症では定期的な輸血が必須であるが, 輸血による鉄過剰が問題となる. βサラセミアや鎌状赤血球症では, 近年様々な治療薬が開発されてきており, 更なる臨床応用が期待される.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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