2009 年 23 巻 2 号 p. 98-104
液体試料の熱伝導率測定には,通常,最低でも数十ml程度の試料を必要とする.そこで,本論文では,シリコン基板上に作製した厚さ50nm程度のビーム型MEMSセンサを用いて1μl未満の極微量試料の熱伝導率を測定する方法について検討を行った.一様に発熱するセンサおよびそのまわりの液体試料の熱伝導解析を行った結果,温度場は自然対流の発生に要する時間より極めて短い0.1ms程度で定常に達し,その時のセンサの平均温度は試料液体の熱伝導率に依存することが明らかになった.以上の結果を基に,液体の熱伝導率を定常状態で極短時間で測定する新しい方法を提案するとともに,センサ形状と測定精度に関する検討を行った.