2016 年 29 巻 4 号 p. 179-184
1本の多層カーボンナノチューブ(MWNT)の狙った位置に集束イオンビーム(FIB)を段階的に照射しながらその熱抵抗を計測し,FIB照射によるMWNTのアモルファス化が熱輸送に与える影響を調べた.複数の試料でFIB照射の位置を変えて計測したところ,熱抵抗の増加量はすべて1回目の照射時が最も大きく,照射回数が増えるにつれてその増加量は減少する傾向が得られた.この結果はナノスケールの材料の熱輸送は拡散的ではなく,フォノンの弾道性を考慮しなければならないことを示しているが,同時に熱伝導率が長さのべき乗に比例するという単純なモデルでは説明できないことも示している.