抄録
緊急的な気管切開を要する閉塞性炎症性喉頭疾患(OILD)は猫で報告されているが、犬での報告はない。我々は緊急処置を要する犬のOILDを永久気管開口術で治療した。 9歳、雄のミニチュアダックスフンドが急性呼吸困難を訴えて来院した。本症例は非びらん性免疫介在性関節炎に対するプレドニゾロン治療を2年前から受けていた。来院時には努力呼吸とチアノーゼがみられ、X線検査では喉頭領域の腫瘤陰影が認められた。喉頭鏡を用いた麻酔下の観察では、開閉運動低下をともなう披裂軟骨の著しい肥厚と、その背側の腫瘤が認められた。フェイスマスクによる酸素吸入をやめるたびに呼吸困難に陥ったため、喉頭腫瘤の生検を行い、細胞診でリンパ腫を除外した後、永久気管開口術を実施した。病理組織学的には化膿性肉芽腫性炎と診断された。術後速やかに呼吸困難は改善した。免疫介在性関節炎が続いているためプレドニゾロンとシクロスポリンの投与を続けているが、術後23ヶ月を過ぎた現在も呼吸困難はみられず、良好な状態が維持できている。OILDで呼吸困難に陥った犬では、永久気管開口術と内科治療の併用が治療選択肢になると思われた。