2020 年 51 巻 1 号 p. 1-7
オピオイドはその強力な鎮痛効果により周術期疼痛管理に重要であることは確かだが、煩雑な麻薬管理が必要であり、大量に投与した場合の術後の疼痛過敏や術後早期の食事開始を妨げる消化管運動の抑制、あるいは人医療では医療用オピオイドの乱用などからマルチモーダル鎮痛などの鎮痛方法を組み合わせることでオピオイドの使用量を減らす試みがされている。そのため最近、局所麻酔薬を用いた局所麻酔が注目されている。強い鎮痛効果による外科的ストレスの抑制、呼吸抑制がなく、術後の消化管運動を抑制しない点などに加え、抗炎症効果による周術期の過剰な免疫応答を抑制し、また、腫瘍免疫を含む免疫機能を抑制しないことから、麻酔方法の選択が患者予後に影響する可能性が考えられる。腫瘍疾患症例動物への予後に関する臨床研究としては今後大規模な前向き研究の結果が待たれる。