2021 年 52 巻 2 号 p. 25-30
11ヶ月齢のキンカローと呼称されるアメリカンカールとマンチカンの交雑種猫が嘔吐と食欲廃絶のため来院し、胸腹部X線検査および腹部超音波検査の結果、消化管異物と腹腔内腫瘤および胸壁腫瘤が確認された。腹腔内および胸壁腫瘤は切除して病理組織学的検査に供したところ、抗S100抗体に陽性を示す異型性の高い多形性に富む間葉系腫瘍細胞の増殖が確認され、悪性末梢神経鞘腫と診断された。腹腔内腫瘤および胸壁腫瘤をそれぞれ摘出したが、第490病日に肺転移を疑う所見が確認され、第520病日に死亡した。若齢および腹腔内での猫の悪性末梢神経鞘腫の発生は見当たらず、非常にまれな症例と思われた。また、本腫瘍の転移はまれであり、過去に2例報告されているのみであった。過去の報告と同様に、腫瘍細胞の多形性や複数の腫瘤形成は転移を引き起こす因子の可能性が高いと考えられた。