抄録
分娩後60日を経過した授乳中の11歳の黒毛和種繁殖牛が食欲不振で治療を受けた後に起立不能となり来院した。食欲廃絶、沈うつ、脱水症および硬固便がみられ、血液検査で重度の低カルシウム(Ca)血症(4.8mg/dl) および低マグネシウム(Mg)血症(0.6mg/dl) が認められ、Ca剤およびMg剤を中心とした持続点滴と胃腸薬の投与を行った。その結果、低Caおよび低Mg血症は徐々に改善され、症例は第11病日に起立し、第19病日には採食量、飲水量ともに安定した。以上より、授乳中の高齢の繁殖和牛においては分娩直後でない時期でも低Caおよび低Mg血症を発症することが示された。