抄録
軟骨下骨の欠損を伴う骨軟骨症の黒毛和種子牛について、その検査と治療の概要について報告した。症例は41日齢で、来院時には右前肢腕節に疼痛、腫脹、熱感がみられ、右前肢に負重は認められなかった。X線検査では、右前肢第三中手骨近位端に直径約1cmの嚢胞状のX線透過性亢進像がみられた。関節液は白濁していたが細菌培養検査は陰性であった。これらの結果より骨軟骨症と診断し、入院3日目から関節内の洗浄および消炎剤の関節内投与を行ったが、症状の改善はみられなかった。39日目のX線検査で病変部の拡大が認められたため、関節鏡手術により病変部全体を掻爬、洗浄し、ヒアルロン酸ナトリウムを1週間ごとに4回、関節内に投与した。術後は徐々に症状が改善し、67日目のX線検査では病変部の縮小と骨組織の充実が認められ、跛行を示さなくなった。本症例では消炎剤投与による治療では、病態の良化は認められなかったことから、病変部の骨、軟骨の壊死により疼痛を生じていたと考えられた。関節鏡を用いた壊死病変の掻爬とヒアルロン酸ナトリウムの関節内投与は、疼痛の改善、関節軟骨の修復や保護、粘弾性の回復などにより牛の骨軟骨症に有効な治療法だと考えられた。