抄録
牛における双子の分娩は増加傾向にあるが、双子の妊娠・分娩は過剰な生理的負担となる。本研究では、分娩前後のBCS、体重、体重変動率(WCR)、体格指数(BMI) の変化について双子分娩牛(双子群) と単子分娩牛(単子群) に分けて調査を行った。さらに、双子分娩が乳牛の生産性に及ぼす影響を明らかにするため、妊娠期間、死流産率、初回授精日数、初回授精による受胎率および廃用率についても比較を行った。その結果、BCSおよびWCRは分娩前2~1ヶ月において、単子群は増加傾向を示したのに対し、双子群では増加は認められなかった。さらに全期間で、BCSは単子群と比較して双子群が低値を示した。BMIは、分娩後1~2ヶ月において単子群と比べて双子群が低値を示す傾向にあった。分娩時の状況として、双子群では妊娠期間の短縮および死流産率の増加がみとめられた。また、双子群では分娩後の初回授精日数の延長、初回授精による受胎率の低下、分娩後の廃用率の増加がみられた。本研究の結果から、双子妊娠牛は分娩前のエネルギー要求量が高くなるにもかかわらず、摂取量が増加していないことがわかった。双子妊娠牛では周産期のダメージを軽減するために、乾乳後期の増飼や良質粗飼料の給与など、乾乳期からの個体ごとの飼養管理が重要であることが示唆された。