抄録
黒毛和種の種雄牛および種雄牛候補牛計119頭を対象に、染色体分析を実施し、系統における転座保有牛の分布、繁殖能力に及ぼす影響について検討した。染色体分析の結果、雄牛119頭のうち10頭(8.4%)に1/29型(6頭)と7/21型(4頭)の2種類の染色体転座が認められた。系統別にみると5系統中3系統(C系、D系、E系)に転座保有牛の分布が認められ、転座型において、C系、D系では1/29型、D系、E系では7/21型が認められた。1/29型転座を保有する雄牛1頭と正常核型を示す雄牛4頭の精液性状を調べた結果、転座保有牛と正常牛との間に差異は認められなかった。また、試験交配時の受胎率を調べたところ、正常牛群で平均62.5%、転座保有牛では44.1%であり、X2検定の結果、両群間に有意な差(P<0.05)が認められた。さらに転座保有牛と正常牛の精子の染色体分析を行った結果、不均衡な核型を持つ精子が正常牛では認められなかったのに対し、転座保有牛では114個中5個(4.4%)に認められた。また構造異常精子が正常牛で144個中22個(15.2%)に認められたのに対し、転座保有牛では114個中34個(29.8%)に認められ、X2検定の結果、両群間に有意な差(P<0.01)が認めれた。以上の結果より、黒毛和種雄牛では、1/29型と7/21型の2種類のロバートソン型転座が広く分布していることが認められた。また各系統での転座保有牛の分布には偏りがみられ、黒毛和種での転座の起源は特定の系統に由来することが考えれた。繁殖能力に及ぼす影響については、精液性状、精子形成に異常が認められていないものの、受胎率の低下が明らかなことから、その原因は転座保有牛に不均衡型や構造異常を示す精子が高率に発生していることに関連していると思われた。