抄録
日本短角種の雄で、出生時に母指頭大の腫瘤が頭部と臀部に認められた例に遭遇した。臀部の腫瘤は出生直後に脱落したのち、再び徐々に大きくなった。一方、頭部の腫瘤は約20日齢で脱落し、その後僅かに膨隆したのみであった。元気・食欲は良好であったが、約40日齢で排尿障害と後躯麻痺がみられ、ついで起立不能に陥ったため、58日齢で放血殺後、剖検した。剖検所見では、腫瘍塊は全身の諸臓器に認められた。組織所見では、腫瘍細胞は類円形、紡錘形および多形性を呈し、大小様々であった。細胞質にフォンタナ・マッソン染色陽性を示す黄褐色の顆粒を含む細胞が少数見られた。核は類円形で明瞭な核仁を有し、細胞分裂像が多く見られた。以上の所見から、本症例は先天性悪性黒色腫と診断された。