抄録
血液ガス分析試料の経時安定性を求めるために、牛の動脈血液と静脈血液を血液ガス専用シリンジ(PII)およびディスポーザブルシリンジ(PS)にそれぞれ各10本ずつ分取し、0、0.5、1、2、3、4、8、12、18および24時間目にpH、炭酸ガス分圧(PCO2)および酸素分圧(PO2)を経時的に測定した。動脈血液におけるこれら3項目の測定値の推移は、PIIではpHが4時間目以降に有意(p<0.05)に低下し(7.400±0.012→7.374±0.015)、PO2値は24時間目に有意に上昇した。PCO2値は経過とともに上昇したが、有意な変化は認められなかった。一方、PSではpH値が24時間目に有意の低下、PO2値は3時間目以降有意に上昇(89.0±9.3mmHg)した。PCO2値は徐々に上昇したが24時間目まで有意な変化は認められなかった。静脈血液ではPIIにおいてpH値が12時間目に有意に低下(7.361±0.017→7.321±0.024)したが、PCO2およびPO2値は上昇がみられたものの24時間目まで有意な変化は認められなかった。これに対してPSではpH値が下降、PCO2およびPO2値は上昇したが24時間目まで有意な変化は認められなかった。これらの成績から、PIIを用いた場合、動脈血液は3時間、静脈血液は8時間まで、PSでは動脈血液が2時間まで、静脈血液では少なくとも24時間は安定であることが確認された。