2005 年 28 巻 2 号 p. 42-46
肥育牛における第四胃変位(DA)の発生状況と臨床所見を明らかにする目的で、宮城県内における平成11-15年度のDA発生状況と平成14-15年度に発生したDA牛の臨床所見を調査した。11年度から15年度にかけて左方変位(LDA)の頭数と頭数比は約2倍に増加したが、右方変位(RDA)は同様の値を示した。管内における大規模肥育牛群であるH牛群では、宮城県全体に比べて頭数比がLDAで6-8倍、RDAで2-3倍の高値で推移した。LDAの発生は18-23ヵ月齢で多い傾向がみられた。また県内の診療センターで診療した278頭では、初診日にはLDAとRDAのいずれも食欲低下、第一胃および第四胃運動低下、第四胃有響音が高率に認められた。整復手術はLDAで99頭(全体の41.6%)、RDAでは9頭(22.5%)で実施され、手術時にはLDAでRDAに比べて第一胃の容積減少と硬固感、第四胃のアトニーとガス貯留が高率に認められた。これらのことから、肥育牛におけるDAの病態は乳牛と異なる可能性があり、DAの発生にはビタミンA欠乏症による食欲低下や導入後疾病による慢性的なエネルギー不足が関与していることが示唆された。