抄録
1.1994年7月12日未明に広島市の市街地にツキノワグマの成獣(メス)1頭が現れ、市民2名を負傷させ、射殺処分された。2.病理解剖の結果、胃内容物の種類と量、マダニ類の寄生状態等により本個体は野生個体であると考えられた。3.本個体が市街地に出現した理由は不明であるが、この時期はツキノワグマにとって交尾期にあたり、雄の執拗な追尾から逃れるために市街地に出現したとも考えられる。4.出現地に最も近いクマの生息地は北西に直線距離で約3.5km離れた広島市安佐南区山本町であり、ここから太田川沿いに移動した可能性が最も高い。5.市民に対する加害原因は、犬飼らの分類による[排除]と区分した。