抄録
北海道帯広市において,エゾモモンガ19個体に発信機を装着し,1991年9月〜1993年8月と2005年5月〜2006年8月に採食物を観察した.本研究では13種の樹木が採食に利用されたが,エゾモモンガによって採食される樹種数は生息する地域の植生によって異なるだろう.エゾモモンガは,広葉樹と針葉樹の両方の葉,芽,花序,種子,果穂,堅果,果実を採食した.エゾモモンガは葉,芽,種子を長期にわたって採食したことから,これらが本種にとって主要な採食物であると思われた.葉は繊維が少なく栄養価が高くなる5月〜7月に頻繁に採食されたが,繊維質が多い晩秋の葉も,選好する採食物の利用可能性が低くなる時期であるために採食された.また,エゾモモンガは早秋に多くのマツの種子を採食した.このことは,冬を越えて生存するために体重を増加させる目的であると考えられた.採食された花粉と堅果は栄養価が高く,エゾモモンガの繁殖サイクルに関係するかもしれない.エゾモモンガ個体群を保全するために不可欠な情報の一つは,異なる地域で採食物を調べることである.