森林野生動物研究会誌
Online ISSN : 2424-1393
Print ISSN : 0916-8265
原著論文
島嶼生態系保全を目的としたイエネコ管理のための条例に対する住民の意識
—「奄美市飼い猫条例」施行後のアンケート調査結果からみえる課題
塩野﨑 和美山田 文雄柴田 昌三
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2018 年 43 巻 p. 1-11

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抄録

野外にいるイエネコによる在来希少種の被害が深刻化している奄美大島では,イエネコ管理のために適正な飼養を求める条例が2011年に全5市町村で施行された.ネコ飼育者と非飼育者のネコ問題に対する意識の違いを把握することは,条例の効果的な運用上重要であるため,奄美市に住む無作為に選ばれた20歳以上の男女1,000人と動物病院を訪れるネコ飼育者を対象としたアンケートによる意識調査を2013~14年に行った.全有効回答者378人中,飼育者の割合は14.6%(55人)であった.条例の認知率は飼育者,非飼育者とも約70%と高く,義務化された飼いネコへの首輪等の装着を守る飼育者の割合も約75%と高い結果を示した.しかし,ネコ問題の存在,飼い猫条例の必要性,ネコの適正飼養の必要性に対する意識は飼育者のほうが非飼育者よりも明らかに低かった.このことから,奄美市の飼い猫条例の効果を高めるには普及啓発による飼育者の理解促進と意識改革が最も重要と考えられる.

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