日本野生動物医学会誌
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原著
糞中プロジェスチンおよびエストロジェン測定によるスマトラオランウータン(Pongo abelii)の卵巣周期と妊娠のモニタリング(繁殖学)
Heri Dwi PUTRANTO楠田 哲士橋川 央木村 幸一内藤 仁美土井 守
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2007 年 12 巻 2 号 p. 97-103

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抄録
スマトラオランウータン(Pongo abelii)雌2頭における糞中の免疫反応性プロジェスチン(プロジェステロン:iP_4,プレグナンジオール-グルクロニド:iPdG)およびエストロジェン(エストラジオール-17β:iE_2,エストロン:iE_1)含量を測定し,繁殖生理学的な状態と卵巣周期の把握が可能かどうかを調べた。2頭の月経血または尿中潜血反応は3.0±0.3日間(n=17)継続し,月経周期は27.3±0.4日間(n=15)であった。卵巣周期は,糞中iPdG動態から27.1±1.3日間(n=15),糞中iE_2動態から26.8±2.4日間(n=17)であったが,糞中iP_4およびiE_1には,明瞭な周期的変動が認められなかった。妊娠後半の糞中iP_4,iPdG,iE_2およびiE_1含量は,非妊娠期よりも有意に高い値を示した。これらのことから,糞中iPdGおよびiE_2の測定は,スマトラオランウータンの卵巣周期の把握に有効であり,iP_4,iPdG,iE_2およびiE_1のいずれかの測定により妊娠診断が可能であることが示された。
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© 2007 日本野生動物医学会
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