日本野生動物医学会誌
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原著論文
飼育下ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)の尿中ステロイドホルモンモニタリングによるControlled Breedingの成功2例
荒蒔 祐輔浜 夏樹川上 博司島田 幸宜中根 伸明中谷 隆二竹田 正人佐野 祐介久田 治信楠 比呂志
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2010 年 15 巻 2 号 p. 49-55

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抄録

2頭の飼育下雌ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)から連日採取した尿中のエストラジオール17-β(E2)およびプロゲステロン(P4)濃度をエンザイムイムノアッセイ法により測定し,E2のピークから推測した排卵日付近で雄との短期同居を試みたところ,2頭とも受胎に成功した。2頭の雌間で卵胞期の平均値には有意差がみられたが(17.2日と12.8日),黄体期には差がなかった(13.7日と12.0日)。妊娠中のE2とP4の動態は2頭の雌間で概ね一致し,1頭は妊娠31~32週目にこれらのホルモンがピークに達し,その後低下して最終交尾の238日後に健康な雄を出産した。残りの1頭(推定39才)は,月経周期中のE2レベルが出産した雌よりも有意に低く,更年期による卵巣機能低下が疑われたが,現在も正常に妊娠を継続中である。今回試みた,雌の排卵にあわせて計画的に雌雄を同居させ交尾に導くControlled Breedingによりわずか数カ月で2頭の雌が妊娠したことから,我々の方法は国内のオランウータンの繁殖を促進させ得るものであると期待している。

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© 2010 日本野生動物医学会
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