日本野生動物医学会誌
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原著論文
ニホンカモシカ(Capricornis crispus)の糞中DNA解析による雌雄判別
西村 貴志山内 貴義斎藤 靖史出口 善隆青井 俊樹辻本 恒徳松原 和衛
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2010 年 15 巻 2 号 p. 73-78

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抄録
ニホンカモシカ(Capricornis crispus,カモシカ)は日本固有種で, 特別天然記念物に指定されている。本研究では, カモシカの糞中DNAのPCR法によるアメロゲニン遺伝子(AMEL)を指標にした雌雄判別を行った。フェノール・クロロホルム法による抽出とCTAB法による精製を行い,糞中DNAを回収した。2%アガロースゲル電気泳動でPCR産物を解析した結果,250bp付近に雌では1本のホモバンド(AMEL XX),雄では200~300bp付近に2ないし3本のヘテロバンド(AMEL XY)がそれぞれ検出された。直腸糞から抽出したDNAを解析した結果, 40個体中38個体(95%)で雌雄判別が可能であり, 判定された性別は全て既知の性別と一致していた。同様に, 滝沢演習林で採取した野外のため糞からの解析を行った結果, 6糞塊のうち5糞塊で雌雄判別が可能であり(83.3%),3糞塊が雄,2糞塊が雌のものと判定された。カモシカは性的二型が顕著でないため, 直接観察で雌雄を判別できない場合には,本研究で開発した雌雄判別法を利用し野外の糞から個体の性別を推定することが可能になる。
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© 2010 日本野生動物医学会
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