21世紀に人類が克服すべき課題は,環境保全(eco-health)の問題である。これらは環境汚染の低減,地球温暖化の抑制といった課題である。また,爆発する人口の増加と食料危機の問題もある。食料の安定供給(food security:食の安全保障)の確立,貧困と飢餓の解消は差し迫った国際的な課題である。しかし,グローバリゼーションを推し進めたとしても,経済格差や文化・信仰の相違なども絡んでおり,これらの問題は容易に解消できる課題ではない。さらに,これらの課題は,相互に複合的に関連しており,結果として感染症(野生動物の感染症,家畜の感染症および動物に由来する人の感染症など)を生み出している。このような意味で,21世紀において,新興・再興感染症の統御は最も喫緊の課題であるといえる。OIEの野生動物疾病届出の戦略も,このような認識を基礎に置いた戦略・戦術である。我が国が,この体制にどのように対応していくのか? 農林水産省,厚生労働省,環境省の取り組みを例に紹介する。