抄録
2000年から 2009年の間に北海道内各地で傷病個体として回収された後、斃死したタンチョウ 75個体の寄生蠕虫類保有状況を調査した。57.3%から線虫 5種(Baruscapillaria sp.,Contracaecum sp.,Paracuaria adunca,Syncuaria sp.,Viktorocarasp.)および吸虫 2種(Echinostoma gotoi,Apatemon gracilis)の計 7種の蠕虫類のいずれかが検出された。 E. gotoiを除く 6種はタンチョウから初記録であり, Syncuaria sp.は日本初記録であった。得られた蠕虫類の中には Paracuaria属,Syncuaria属およびViktorocara属など,消化管潰瘍や腸炎の原因となる線虫が含まれたため,絶滅危惧種であるタンチョウの保護管理上,今後寄生虫のモニタリングが必要であると考えられた。