日本野生動物医学会誌
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原著論文
糞中の性ホルモン動態からみた木曽馬とモウコノウマの卵巣周期および妊娠の比較
木仁楠田 哲士胡日査高須 正規後藤 佳恵齋藤 麻里子香坂 美和堀 泰洋土井 守
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2014 年 19 巻 3 号 p. 87-99

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抄録

木曽馬とモウコノウマの繁殖生理状態を把握するために,非侵襲的な方法である糞中性ステロイドホルモン代謝物含量の測定を行った。また,糞の採取条件を決定するため,木曽馬をモデルとして直腸糞を 20℃下に保管し,その時間経過ごとのホルモン値を酵素免疫測定法により調べた。その結果,黄体期と非黄体期の糞中プロジェステロン(P4)含量は 8時間以降徐々に増加し,糞中エストラジオール-17β(E2)とエストロン(E1)は 84時間以降有意に増加した。次に,木曽馬の糞中P4含量の年間動態を血中と比較した結果,同様の変動傾向を示し,両値間に相関係数0.46(p<0.01)の有意な正の相関が認められた。木曽馬とモウコノウマの糞中P4動態に基づく排卵周期はそれぞれ23.6±0.7と26.8± 0.7日間であった。また,通常の繁殖季節はそれぞれの種で5,6月~11月および3,4月~翌年1月までであったが,両種共に周年卵巣周期を示した個体が認められた。両種の妊娠期の糞中P4含量は,妊娠60~70日目に増加し,120~300日目の間に高値を維持し,出産直前に急激に増加した。E2とE1含量は両種共,最終交尾後 90日目から急激に上昇し,150~190日の間にピーク値を示した後,徐々に減少した。両種の妊娠期の糞中からは主に5α-pregnan-3β-ol-20-oneおよび5α-pregnane-3,20-dione,E2および E1が検出され,これらを指標とした測定は妊娠期のモニタリングに有効であることが明らかとなった。

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© 2014 日本野生動物医学会
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