日本野生動物医学会誌
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特集論文
国際的な動物園ネットワークを用いた野生動物感染症の早期警報システムの構築
村田 浩一
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2014 年 19 巻 4 号 p. 131-135

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抄録

近年,高病原性鳥インフルエンザ,口蹄疫等の家畜感染症が世界各地で発生し,野生動物との関わりが懸念されている。これらの感染症は,野生動物の生物学的移動や商業的な移動に伴い広域的に伝播し流行する可能性があるため,そのリスクを正しく評価し対応するには,野生動物感染症情報ネットワークの構築と感染症発生に対する早期警報システムの導入が必須であり,これらに関する基盤的調査研究を国際連携の下で実施する必要がある。国立の野生動物医学研究機関による家畜と野生動物の共通感染症防御を目的としたサーベイランス体制の構築が望まれるが,経済的もしくは社会的事由に加え,本分野に関与する専門家の少なさもあって実現は容易でない。そこで,世界中の動物園で日常的に野生動物の健康管理に従事している専門家としての獣医師に着目し,国際的な動物園ネットワークと動物園獣医師との協働による野生動物感染症の監視・制御体制を提案したい。その人的交流と感染症対策技術が広域的に共有され活用されることで,野生動物感染症情報ネットワークおよび野生動物と家畜の共通感染症発生に対する早期警報システムが構築され,将来的により組織的な野生動物感染症防御へ発展することが期待される。国際的な動物園獣医師の連携は,保全医学に基づく家畜を含む動物とヒトと生態系の健康,すなわち生態学的健康(Ecological Health)の維持に貢献できる。

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© 2014 日本野生動物医学会
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