2019 年 24 巻 4 号 p. 129-133
豚丹毒菌 Erysipelothrix rhusiopathiae はグラム陽性の細胞内寄生性を示す桿菌であり,ヒト,家畜,野生の陸生および海棲哺乳類,鳥類など,多くの脊椎動物に感染し豚丹毒症を引き起こす。野生哺乳類の場合,感染経路は不明であるが,飼育豚では,健康個体の多くは本菌を扁桃や他のリンパ組織に保菌しており,生体の抵抗性を減弱させるような条件が加わった場合に,これらの菌が体内で増殖後に拡散し,発病へと進展すると考えられている。本稿では,本菌のゲノム解読から得られた新しい知見の他,本菌の病原性と宿主防御機構について説明する。