関西理学療法
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トップダウン評価に基づいた評価とアプローチ..
トップダウン評価に基づいた評価とアプローチ
鈴木 俊明
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2025 年 25 巻 p. 1-3

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特集

トップダウン評価に基づいた評価とアプローチ

関西理学 25: 1-3, 2025

トップダウン評価に基づいた評価とアプローチ

鈴木 俊明

Assessment and approach based on top-down evaluation

Toshiaki SUZUKI, RPT, DMSc.

Abstract

Top-down assessment is an important evaluation process in physical therapy. It is essential to correctly understand top-down assessment, conduct appropriate movement analysis, and implement appropriate physical therapy based on the issues identified through the assessment.

J. Kansai Phys. Ther. 25: 1-3, 2025

Keywords: top-down evaluation, assessment and approach, motion analysis

はじめに

理学療法をおこなうには理学療法評価を正しくできることが不可欠である。理学療法評価にはトップダウン過程の評価(トップダウン評価)とボトムアップ過程の評価(ボトムアップ評価)があるが、理学療法の臨床場面では、動作分析を主体とするトップダウン評価が重要であると考えている。本稿では、トップダウン評価について解説し、トップダウン評価からの理学療法アプローチについて述べる。

トップダウン評価とは

正しい理学療法評価には患者自身の生活状況を把握 することが必要である。理学療法評価では機能障害ばか りに注目するのではなく、患者の年齢、仕事内容、趣味、住居状況などの社会的背景を把握することが大切になる。社会的背景により問題となるADL が異なることを理解 することが大切である。患者の障害を把握して日常生活 を困難にしている原因を追求していく過程が理学療法評 価である。

理学療法評価にはボトムアップ評価とトップダウン評

関西医療大学

価の2つがある。ボトムアップ評価は、疾患の障害部位 に関連した検査項目を挙げて検査する方法である。例え ば、脳血管障害患者は片麻痺という症状を認めるために、ボトムアップ評価で検査することになると、麻痺側上下 肢・体幹の機能障害に対する検査をして、その結果を統 合することになる。活動性の低い手術後の患者は動作可 能な動作がないため動作観察を主体としているトップダ ウン評価は困難なため、ボトムアップ評価が用いられる。また、ボトムアップ評価は疾患から考えられる全ての検 査をおこなうために、必ず機能障害の問題点を見つける ことはできるが、莫大な評価時間が必要である。

トップダウン評価はカルテや医療面接での情報収集し た内容から患者の問題となる動作を挙げる。問題となる 動作が能力障害の問題点であり、その問題の動作が基本 動作であれば動作観察をおこなう。問題となる動作が身 のまわり動作であれば、動作を構成する基本動作を考え て動作観察をおこなうわけである。要するに基本動作の 障害把握が大切である。その理由は、背臥位、座位、立 位などの姿勢とそれらをつなぐ動作である寝返り動作、起き上がり動作、立ち上がり動作、歩行動作などの基 本動作は身のまわり動作に関連しているからである。例 えば、寝ている患者がトイレに行くことを考えてみたい。

Kansai University of Health Sciences

2 鈴木 俊明

トイレに行くまでに、寝るという背臥位から、座位にな るために起き上がり動作が必要になる。また、座位になっ た姿勢から立位になるという立ち上がり動作、立位から 歩いてトイレに行くという歩行動作が必要になる。また、トイレに入ると、便器に座るという着座動作、用を足す 間の座位保持、そして便器からの立ち上がり動作、歩い て寝ている場所まで行く歩行動作が必要になる。このよ うに身のまわり動作であるトイレ動作は起き上がり動作、座位、立ち上がり動作、立位、歩行動作、着座動作のよ うな多くの基本動作で構成されているからである。しか し、トイレ動作で用を足した後にお尻を拭く動作、要す るに座位での側方移動動作は基本動作ではないが、広義 の基本動作である基本動作の動的場面を適応することで トイレ動作は全て基本動作に分割できる。

基本動作の動作観察をする場合は漫然と動作を観察するのではない。カルテの情報や医療面接より基本動作の実用性の低下は何かを考えて動作観察することが大切である。実用性とは、安全性、安定性、スピード・遂行時間、耐久性、社会に容認される方法があげられる。安全性とは動作に危険性がないということである。具体的には、歩行動作においては転倒の危険性がないかどうかが安全性の基準となる。安定性は2つの側面からの評価がある。そのひとつは安定して動作がおこなえるか、もうひとつは身体重心が基底面内にあるかである。前者はいくつかの状況が考えられる。例えば、立ち上がり動作において、1回目はなんとか動作可能であるが2回目は殿部離床後に後方に転倒して立ち上がり動作ができない場

合のように動作の再現性が乏しい場合や立ち上がり動作 で殿部離床相から伸展相で急に動作速度が早くなるよう な動作速度に一貫性がない場合も安定性低下である。後 者の身体重心が基底面内にないということは、いわゆる バランスが悪い状況があてはまる。スピード・遂行時間 は動作完了するまでの時間であり、例えば 10 m歩行時 間などである。耐久性はくりかえすことのできる回数・距離であり、例えば、寝返りが1回は可能であっても2、

3回連続してできるかということである。社会に容認さ れる方法とは格好や作法であり、日常的に公共の場で実 際おこなっても問題がない格好かどうかである。問題と なる動作の実用性の決定には単に運動機能面だけでは なく社会的背景を考慮しながら考えることが大事である。安全性や安定性の低下は全ての年齢の方に当てはまるが、スピード・遂行時間、耐久性、社会に容認される方法の 低下は社会のなかで活動性が高い方が適応となる。

つぎに、基本動作の実用性の低下の原因を動作観察から考える。動作観察は実用性の低下が見られる時期だけの動作を観察するのではなく、動作全体を観察することが大事である。このためには、健常者の動作を理解することが大切である。正常動作を知ることは、患者が遂行している動作の異常性を理解することに役立つ。患者が遂行している動作を観察しても、「動作がなぜできないのか」、「何が異常なのか」、「何が健常者と違うのか」と考えていくことが不可欠である。そのため、異常動作を知るためには正常動作の理解が必要であり、「健常者はどうしてできているのか」、「正常動作が可能となるため

図1 動作分析の流れ

トップダウン評価に基づいた評価とアプローチ 3

の要素や必要条件はどのようなものがあるのか」を考え る必要がある。このように考えられるためには、事前に 基本動作の正常動作の知識を知ることが大切である。し かし、正常動作には様々な方法があり、個人間でも動作 様式が異なる場合がある。健常者の細かな動作の違い を動作観察することや、動作を観察して真似することで、患者の動作観察の技能も向上することができる。健常者 の動作観察はただ観るだけでなく、動作の関節運動の順 序性や関節運動の相対的な関係などを理解しながら観察 することが大切である。

動作観察より考えられる機能障害の問題点を仮説して、理学療法検査をおこなう。理学療法検査で問題点が確定 した場合は問題点に対して理学療法を実施するが、理学 療法検査の結果が正常域である場合は再度、動作観察し て新しい機能障害の問題点を仮説して再度、理学療法検 査をすることが重要となる。

問題となる基本動作の動作観察から機能障害を仮説し、理学療法検査から機能障害を確定する過程が動作分析

(図1)である。

トップダウン評価の利点は、機能障害に対する理学療法検査項目が限定的になり、検査の目的がより明確になる、能力障害と機能障害の関係や複数の機能障害間の関係が理解しやすい、患者の問題となるADL の構成要素としての基本動作と問題になる機能障害がつながりやすいことである。また、患者に必要で適切な評価のみ迅速におこなうことができることも利点である。欠点は、急性期のように動作観察ができない場合にはトップダウン評価が使えないが、この場合は仮想トップダウン評価がある。これは、動作不可能な患者が最初に獲得させたい基本動作を考えて、その動作を獲得するために必要な機能を考えて検査することである。

トップダウン評価からのアプローチとは

理学療法のアプローチはトップダウン評価が適切におこなわれていたら難しいことではない。トップダウン評価で機能障害が決定したら、その機能障害だけにアプローチすることが大事である。しかし、機能障害は一つだけではなく、複数存在する。理学療法では、全ての機能障害を解決する必要はない。誤解されないように丁寧に解説すると、全ての機能障害を1回の理学療法で解決できれば良いことであるが、それは不可能に近いことで

ある。我々セラピストは、機能障害を正常域に回復させることが目的ではなく、患者の問題となる基本動作の実用性低下を改善させることで日常生活を円滑にすることが目的である。そのためには、最も重要である機能障害の問題点だけに理学療法を実施し、問題となる基本動作がどのように改善したか確認することが大事である。理学療法実施後に基本動作の実用性が全く変わらないのであれば、問題となる機能障害の順序が間違っているわけである。例えば、立位での移動側下腿の外側傾斜が不十分なために、歩行開始動作の安定性が低下している患者を想像していただきたい。この患者の機能障害レベルの問題点として、足部(距骨下関節もしくは横足根関節)の外がえし可動域制限、長・短腓骨筋の筋緊張低下、足部内反筋群の筋緊張亢進が考えられる。これらに対応した理学療法検査で全てが問題であると判断した場合、理学療法検査での問題点より障害程度を考えて優先順位を決めて、最も優先順位の高い問題点を解決するような理学療法をおこなうわけである。最も優先順位の高い問題点が足部内反筋群の筋緊張亢進である場合には、足部内反筋群のストレッチングなどの足部内反筋群の筋緊張を低下させる理学療法を実施後、すぐに再度、立位より歩行を促すことで理学療法効果を確認する。その結果、立位からの側方移動が容易になり、歩行の実用性が改善することができれば、理学療法は足部内反筋群に対するアプローチだけで良い。しかし、理学療法効果を認めなければ、機能障害の問題点で優先順位が2番目に高いと考えた機能障害に対して理学療法を実施する。そして、理学療法後に理学療法効果を再度、検討することが大切である。このような手順で理学療法をおこなうことで、本当に大事な機能障害は何かを明確にすることが重要である。全ては患者が教えてくれる。理学療法の効果を丁寧に確認することが大切である。

具体的な理学療法は、エビデンスに基づいた方法であればどのような方法でも良い。また、機能障害を解決できる方法は、基本的な理学療法で充分である。大切なのは、理学療法評価が適切であるか否かである。

おわりに

トップダウン評価は理学療法で重要な評価過程である。正しくトップダウン評価を理解して、その評価に基づき 理学療法を実施することを理解していただきたい。

 
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