抄録
地すべりの多発する北陸地方 (新潟・石川・富山の3県) においては広域における地すべり発生ポテンシャルを評価することは防災上非常に重要である。地すべりの発生は豪雨並びに融雪による地下水流動の変化や地下水圧上昇といった水文現象に起因している。そこで地すべりの発生を予測するために適した水文指標としてダムへの流入量を分析した。人為的な影響を受けない13のダムに関し, 流入量をはじめとする種々の水文観測資料から複数の水文指標を作成し, 統計的な分布に着目しそれらの指標の特性を分析した。約5ヵ年の地すべり資料を対象として, 水文指標と地すべり発生との対応関係を検討した。その結果, 地すべり発生直前にピークを示したダム流入量に基づく直前ピーク日水頭が, 最も地すべり発生の捕捉率が高く, 空振り率が低く, かつ期待超過日数を低くできる水文指標であることが判明した。得られた指標は, 年間超過日数が約15日で7割程度の地すべり発生の捕捉率となり, 巡視点検の目安等に活用しうると考えられる。