日本地すべり学会誌
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論文
アンカー自由長部周面摩擦が締付け力に及ぼす影響
片山 直樹
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2010 年 47 巻 4 号 p. 177-190

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抄録

地すべり対策として用いられるグラウンドアンカーでは, 自由長部になされるグラウトの充填注入により, その周面も地盤と付着するため, アンカー全長にわたり周面摩擦抵抗が発現する構造となる。アンカー設計上は, 自由長部の周面摩擦抵抗は考慮していないが, その摩擦抵抗が負担する割合は比較的大きいことがこれまでの研究で示されている。このため, アンカー緊張時には自由長部の周面摩擦抵抗を介し, 上向きの応力が地盤に伝達されるものと思われ, これが受圧板による下向きの応力, すなわち締付け力と干渉することで, アンカーの地すべり抑止効果の一つである締付け効果が低減される可能性が指摘される。そこで本研究では, アンカーの実大実験, 模型実験および数値実験により, 自由長部の周面摩擦抵抗の有無による2種類のアンカーについて, 緊張に伴う地盤内応力を比較した。その結果, 自由長部の周面摩擦抵抗が存在するアンカーは, 相対的に締付け力が低減され深部に伝達することが示された。このことから自由長部の周面摩擦抵抗は, 締付け力の伝達を阻害する要因となるものと推定した。

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© 2010 公益社団法人 日本地すべり学会
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