抄録
大井川中流域の深層崩壊発生斜面の変化過程について,過去60年間の空中写真と衛星画像を用いて解析した。5箇所の崩壊発生斜面を解析したところ,いずれの斜面でも先行崩壊が認められ,崩壊発生前に膨らみだし斜面の脚部で小規模な先行崩壊が発生するタイプ(押し出し型)と,先行崩壊の斜面上側に向かって崩壊地が急速に拡大していくタイプ(拡大型)が認められた。過去100年間に著しい拡大が見られた崩壊地の背後では年10cm程度の速度で開口するクラックが見られるなど顕著な地盤変動が確認された。これらのことから,崩壊地の斜面上方で顕著な地盤変動が認められる場合は,これらの先行崩壊を深層崩壊の前兆現象として利用可能と考えられる。