日本地すべり学会誌
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実効雨量法を用いた積雪地域の山間地に位置する地すべり地の地下水位変動解析
桂 真也畠田 和弘木村 誇丸山 清輝池田 慎二秋山 一弥
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2016 年 53 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

 実効雨量法は地すべり地における地下水位の解析によく用いられてきたが,積雪期に対する適用事例はほとんど見当たらない。本研究では,大規模な観測施設を用いずに融雪水量を推定した上で,降雨に融雪の影響を加味した,地下水位の変動に影響を与えうる水量(地表面到達水量MR)を算出した。そして,地下水位の変動を最もよく再現できるパラメータ(実効地表面到達水量EMRの半減期,遅延日数,直線回帰式中の係数)を求めた。解析の結果,EMRが地下水位の有意な説明変数であったことから,本研究で用いた手法は,大規模な観測施設の設置が困難な積雪地域の地すべり地の地下水位変動を解析する上で有効であると考えられた。期間によりEMRに対する地下水位の応答特性が異なっていたため,期間を2つに区分して解析したところ,再現精度が向上した。期間により応答特性が異なる理由として,①間隙空気,②融雪末期の積雪分布特性,③横ボーリング工,④蒸発散の影響が考えられる。既往研究や本研究で得られた各パラメータの値と地質や地下水位の変動深度等との間に明瞭な関係は認められず,今後さらに解析事例を増やしていくことが重要である。

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