地すべり
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地すべり防止杭の挙動に関する実験的研究 (1)
福本 安正
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1975 年 12 巻 1 号 p. 20-24

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抄録
地すべり防止杭にヒズミ計をとりつけ, 8地区の地すべり地に計測をおこない, 杭に生ずる曲げモーメント, セン断力, 反力およびタワミ曲線の解析をおこなった。その結果, これらの断面力の分布曲線は, (1) 杭の剛性。 (2) 地すべり面の深さ。 (3) 地すべり面から上の杭の突出長。 (4) 地すべり面以深の根入長。 (5) 地すべり土圧のかかり方。等の各因子の影響をうけて曲線分布が変化することが明らかとなった。しかし, これらの各因子による杭の挙動を現場杭により, さらに究明するには多大の手数と経費が必要で, きわめて困難であるので, 模型杭によって解明を試みた。
地すべり斜面の末端部に土塊を掘りとり, 現位置の土塊供試体をタコ掘りして作り, しかも供試体の底面が地すべり面の土層となるようにした。そしてこの土塊供試体にヒズミ計をとりつけた模型杭を挿入したのち, 供試体を水平載荷し, ヒズミ量を測定して杭の断面力の分布曲線を求めた。その結果,
(1) 曲げモーメントの分布曲線はS字型と弓型の2つの分布型をなす。
(2) S字型では地すべり面の上と下で最大曲げモーメントを生じ, 剛性の小さい杭では2箇所で破壊する。しかし, 弓型では, 地すべり面の下で最大曲げモーメントが生じ, ここで破壊する。
(3) 分布型は剛性の大小によって, 支配的な影響をうける。剛性の大きい杭は弓型となり, 小さい杭ではS字型となる。
(4) 剛性の異なる杭を並べた場合, 剛性の大きい杭の曲げモーメントが大きくなり, その大きさは杭の剛性率にほぼ比例する。
これらの実験結果は現場の防止杭の計測結果と照合して一致することが明らかとなった。
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© 社団法人日本地すべり学会
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