抄録
空中写真により, 南部北海道の木古内町釜谷の丘陵性山地で, かなり大規模な地すべり (幅300m, 長さ700m) が最近発生していたことがわかった。それ以前の空中写真の判読により, この地すべりは1988年の6月23日以降, 7月27日以前に起こったことが明らかになった。さらに, 1948年頃, 1959年, 1973年, 1976年, 1988年に撮影されたこの地すべり付近の空中写真を判読すると, 針葉樹林 (杉の人工林) の伐採と関連した地すべり地形の変化が読み取れる。さらに, 筆者らはこの地すべりの発生前と後とを比較して量的な解析を行い, 現地調査をも実施した。その結果, 地質的な素因としては, 緩傾斜の新第三紀泥岩層にはさまる粘土化した流紋岩質凝灰岩から発生した流れ盤型であり, 誘因としては6月-7月始めのやや強い降雨による, 古い地すべり面の間隙水圧の上昇が推定される。