抄録
大規模な地すべりが, 中国四川省龍門山華夏系構造帯に位置し, 長江 (揚子江) の支流である岷江および雑谷脳河の流域で数多く観察された。地すべりは再活動型の崩積土すべりであった。地質学的にはこの地域は, 晉寧期の花崗岩の上に堆積した寒武 (カンブリア) 系から三迭 (三畳) 系にわたる堆積物からなる。これら堆積物は, 激しい構造運動を受けて堆覆 (ナッペ) 構造をとり, 多少とも変成作用を受けている。地層の中では志留 (シルル) 系~泥盆 (デボン) 系の千枚岩が, 破砕および粘土化作用をうけて弱化し, 地すべりの80%以上はこの地層で起こっている。
地すべりの誘因は河の下刻作用と考えられる。山腹から現河床にかけて複合した地すべり地形がみられ, 地質時代以降河床の低下とともに周期的に地すべりが起こってきたと思われる。最近は, 森林伐採, 道路拡幅に伴う斜面末端の排土が地すべり発生を加速している。地すべりは, 民家や農地の破壊, 道路分断とともにしばしば河川の閉塞を引き起こし, 地元だけでなく上流および下流域の人々に大きな生態的・社会経済的被害をもたらす。