抄録
安国地すべりの基岩は新第三系上部中新統生田原層凝灰質砕屑岩類や酸性火砕岩類であり, そこには, 後期中新世 (8.1~7.7Ma) の隆尾熱水活動に伴う熱水変質作用によって形成された, イライト/スメクタイト混合層鉱物帯が発達している。その地すべり移動体中の地すべり粘土や岩屑はイライト/スメクタイト混合層鉱物を主成分としている。この地すべりは, 現在, 滑落崖が不明瞭であることや, 移動体が礫混じり粘土やシルトからなることなどから, 粘質土地すべりと考えられるが, 初生的にも比較的広く分布するカリ長石帯に囲まれた粘土化帯 (イライト/スメクタイト混合層鉱物帯) 中で起こったと推定される。したがって, この再活動型地すべりや初生地すべりは, 多量の膨張性粘土鉱物 (イライト/スメクタイト混合層鉱物) を含む, 熱水性イライト/スメクタイト混合層鉱物帯の不安定な性質に強く関連して起こった, 熱水変質帯地すべりであったと考えられる。このことは, 古地熱地帯や活地熱地帯における熱水変質帯地すべりの危険度評価やハザードマップ作成の際に大いに役立つと思われる