抄録
地すべりの対策工計画で利用される2次元安全率は採用する安定解析式による計算誤差や安定解析に関するさまざまな不確定要素によって誤差を含んだ値となっている。この安全率の誤差が対策工の効果推定にも大きく影響しているが, 個別の現場事例について検証した事例はあるものの汎用的な検証事例はほとんどない。
一方, 対策工計画における計画安全率は対策工の規模を決定する重要な値であるが, その値の妥当性は経験的なものに負うところが大きく, 学術的に検証されていない。対策工効果に与える不確定要素の影響を汎用的に検証することにより, 今後, 計画安全率の妥当性の検証に役立つと考える。
本論では代表的な不確定要素として移動層の単位体積重量, すべり面の土質強度定数, すべり面深度の3つに注目し, 地下水排除工, 排土工, 抑止工の3つの対策工効果へのこれら不確定要素の影響を全国133現場243断面の現場事例データを用いて検証した。
その中で複数の不確定要素による推定誤差の重ね合わせ効果や安定解析式の違いによる推定誤差についても検証した。
その結果, 不確定要素の推定誤差による対策工効果推定の変動は地すべりの規模が小さいほど大きくなること, 対策工を併用することによってその不確定要素の影響が増大すること, 簡便法による対策工効果の評価値が簡易Janbu法による評価値より大きくなる地すべりが全体の6割以上になることなどが明かとなった。