日本地すべり学会誌
Online ISSN : 1882-0034
Print ISSN : 1348-3986
ISSN-L : 1348-3986
四万十層群の斜面崩壊の性状と植生の役割に関する研究
潘 暁波日浦 啓全篠 和夫江崎 次夫
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 41 巻 2 号 p. 142-153

詳細
抄録

本論では, 四万十層群の斜面で生起する崩壊現象を取り扱っている。近年, 四万十層群の斜面崩壊事例が多発しているように思われる。これらの現象を理解するために, 崩落土砂量の規模ではひとつオーダーの低い花崗岩類山地の表層崩壊を対比させたて考察した。発生場の条件のとして斜面傾斜の分布にそれほど違いはないが起伏量と斜面長に相違のあること, 表層のポーラスな土層の構造については地質帯の違いはあるものの共通した構造を持つことを確認した。その後, 平成10年に高知県安芸郡安田町与床で発生した斜面崩壊についてのビデオ映像と観測記録を解析し, その特徴としてクリープ的な前兆現象を示すことを確かめた。崩壊時には表土の崩落に止まらず, 緩みを生じている基盤岩の深さまで進むことを指摘した。さらに, 降雨を直接の引き金としないで発生した事例であることを指摘した。ついで, ビデオに写された樹木の崩落時の挙動より砂質土的な取り扱いが可能であることを指摘した。人工林として植栽されたスギでは根茎のネットワークによる崩壊抑止効果は期待できないが, 単木が成長していく過程で土層全体の強度発現に一定の役割を果たしていることを, 一面せん断試験器を用いて実験で検証した。

著者関連情報
© 社団法人日本地すべり学会
前の記事 次の記事
feedback
Top