抄録
神戸層群は礫岩, 砂岩, 泥岩および凝灰岩の互層から構成され, 地すべりが多発する地層として知られている。神戸層群の凝灰岩には切土掘削に伴う遅れ破壊が認められる。この遅れ破壊は, 降雨や地下水上昇などの影響にかかわらず生じており, 凝灰岩を含む地山を掘削してから数年~10年の期間をおいて発生することが多い。筆者らは, 神戸層群の凝灰岩に見られる遅れ破壊について, その発生機構を推定するために, ここ20年間に確認された地すべりのうち28箇所の遅れ破壊事例を詳細に検討し, その特徴を明らかにした。
1) 遅れ破壊の崩壊形態は, 大部分が直線型を示しており, 断面的には層理面に沿ったすべり面と断層・節理等の分離面の2平面で形成されている。その地すべりの深度 (d) と幅 (W) の比率は3~13で, 一般的な地すべりの値と一致する。
2) 地山の掘削から1年後に発生した遅れ破壊は全体の70%に達し, 掘削後7~8年を経て崩壊するケースもある。
3) 遅れ破壊によって形成されるすべり面は, 軟質な凝灰岩や地層境界に発達する層状破砕帯中に認められる。
4) 軟質な凝灰岩や層状破砕帯を有する切土面は, 掘削されてから数年の間, その面内に歪みが蓄積され, 弾性的な変形の後微小変形が継続する。
5) 神戸層群の凝灰岩層には軟質凝灰岩, 層状破砕帯に膨潤性鉱物のスメクタイトが含有されている。神戸層群のスメクタイトには, 中間型と崩壊型が存在し, 前者は掘削後の変形が長期に継続し, 遅れ破壊の原因となる。一方崩壊型はCaが豊富で切土後比較的早期に崩壊する。
神戸層群の凝灰岩及び層状破砕帯に生じる遅れ破壊の多くは, 地山の掘削に伴い応力が解放されることによって発生する。掘削された切土面には亀裂が生じ, そこに地下水が浸透する。その後, 地下水と軟質凝灰岩や層状破砕帯に含まれる中間型のスメクタイトが反応して, 膨潤し, 切土面を変形させる。軟質凝灰岩や層状破砕帯は, 含水比の増加と変形の進行に伴い徐々に勢断強度を低下させ, 掘削後数年~10年を経て突然崩壊すると考えられる。