抄録
東北地方の新第三系中新統珪質泥岩層に発生する地すべりは, 大規模な風化岩~ 岩盤地すべりの様相を示すものが多い。
本稿は, 奥羽山脈西縁部と横手盆地の境界付近に分布する珪質泥岩層の異常堆積構造と地すべりの関連性の解明を目的としたものである。阿部ほか (1994), 阿部 (1996) のこれまでの研究結果をもとに, 筆者らの新たな事例観察や試験結果を加えて検討した結果, 珪質泥岩層の異常堆積構造は主として山内層堆積時の海底古期地すべりによるものであることと, 特に山脈縁辺部で破砕が著しいことが検証された。現在山脈縁辺部で発生している地すべりは珪質泥岩層の異常堆積構造とこれに伴う弱面を素因として発生している可能性のあることが明らかになった。また, これらの地すべりは地すべり地形を伴なわない場合が多く, そのため地下構造からの発生予測が重要となる。